敬老

父は生きるのに意欲的ではない
ただただ静かに過ごしたいと思ってるんじゃないかしら
慣れ親しんだ我が家で大好きな母と一緒に
少し前まで、口をついて出る言葉は「いい人生だった」
どんなふうにいい人生だったか
好きな酒を飲みながら上機嫌で語る父
仕事一筋、世のため、他人のため、家族のため
一生懸命に働いてきた
退職後も第2の仕事をし、その後も80歳まで役目を全うした
もう何もかも済んだ
そう思っているんでしょうねきっと
何もすることが亡くなった父はどんどん老いて行った
私は戸惑い大好きな父に何とか老いずにとどまってほしいと
何年も葛藤した
その間老いのスピードに拍車がかかった
役目を終えいい人生を振り返りゆったりとした時を過ごしながら自然に衰えていく
それに待ったをかけるなんてエゴだと気付いた
認知症の病名は要らない
よって薬も要らない
最後の瞬間までいい人生だったと思い続けてほしい
そうしてにっこり送ってあげたい